水沢青年会議所について
理事長所信
2011年3月11日
多くの尊い命を奪ったあの未曾有の災害は、
国のかたちはおろか自分の価値観までも変えていった。
あの日、私は横浜のみなとみらいにいた。
激しく揺れる照明
陳列された商品が棚から崩れ落ちて壊れ、
人々の悲鳴や緊急放送が館内に響き渡っていた。
あの日からすでに11年が過ぎ、現在は世界規模の感染症まん延、
国同士の紛争勃発、人々の安全保障を脅かす問題となる気候変動などにより、
政治や経済、人々の生活にまで深刻な影響を与え続けており、
あの震災を思い返すきっかけも少なくなってきたように感じる。
ですが、私はあの日以来、
あたりまえなんてものは、もはや存在していないと考えており、
私の中で生きていることへの感謝、
関わってくれる多くの人々への感謝に溢れている。
初めてあった人には「はじめまして」の気持ちを、
また会えた人には「また会えましたね」という喜びを、
別れるときには「また会えたらいいですね」という願いをこめている。
青年会議所に在籍していること、その中で運動できることもあたりまえではなく、多くの人の理解や協力が支えとなって、今の自分がいる。
だからこそ、私たちはこの時代に生きる青年として前向きに物事を考え、責任を背負い、ひたむきな覚悟を持ってJC運動と向き合わなければならない。
やるからには覚悟をもって、みんなで苦労を分かち合い、励まし合い、うれしいことや悔しいことを共有し、共に青年会議所のメンバーとして、ひとりの人間として成長していこう。
自分から行動しなければならない意味
青年会議所の全会員は、「明るい豊かな社会を築き上げよう」と、必ずJC運動や会議の前に唱和している。私たちにとって最も身近な社会、それは家族と会社である。つまり、私たちJAYCEEにとっての明るい豊かな社会とは、会員の家族と会社からしかはじまらないと考えている。
JC宣言の中に、「希望をもたらす変革の起点として」という一文がある。物事のはじまりを意味する「起点」は、私たちJAYCEEが率先して行動する組織であれという矜持を表現し、私たちから社会変革を生み出していくという意思も表している。まちを語るときも、国を語るときも、全ての前提は自分自身が何をしているのか、そこに尽きる。
ですが、行動するJAYCEEになれということではなく、〈ひとりの市民として、家族のために、会社のために、まずは自分自身から行動しよう〉ということであり、明るい豊かな社会を築こうとするからには、自分にとって身近な社会を明るく豊かにする努力からはじめなくてはならない。それこそがまちを変え、国を変える大きな変革となるのだ。
子どもを産み育てたくなるまち
力強く元気に泣く赤ちゃん。声を上げながら走り回る子どもたち。心配そうに、けど嬉しそうに見守るお母さんとお父さんがいる。そんな空気感が大切にされているまちは、きっと幸せであり、いい未来が待っているに違いない。当たり前のことのように聞こえるが、そんな当たり前を守ることこそ、私たちJCにできる明るい豊かな社会を築き上げていく運動であると考えている。
内閣府が5年ごとに調査を実施しており、2021年3月に公表した少子化社会に関する国際意識調査によると、「子どもを生み育てやすい国だと思うか」との質問に対し、日本では「そう思わない」と答えた人が6割に達した。欧州各国では2~17%であった。過去の結果と比較すると、「そう思う」の割合は2010年が52.6%、2015年が46.6%となっており、10年間で10ポイント以上下落している。
また、日本の出生率はというと、1899年の統計開始以来右肩下がりである。奥州市も例外ではなく、合計出生数は1995年の1,277人を最高に推移しており、その後2015年には846人であった。20年もの間で400人近い差ができている。奥州市は出生数の減少を問題視し解決するために経済面や生活面に対する様々な改善で出生数減少に対する施策を講じている。では、JCの役割とは、やるべきことはなんなのか。それは、「空気感」を変えることではないか。つまりは、〈出産や育児において生じているハンディキャップを改善する〉ことで、子どもを産み育てやすく、子育てをするお母さんお父さんを支えていく世の中の流れをつくれるのではないか。
もしも、この空気感に共感を抱く人たちが増えたなら、共感は実感につながり、実感はやがて世の中を変化させる行動へとつながるだろう。
人の心を動かすことをできる人は、信念を持ち合わせている
2022年度公益社団法人日本青年会議所 中島土会頭の所信演説を聞いていて、あふれる想いが止まらなかった。ハートがハートに語りかけるパワー・スピーチを久しぶりに聞いた。会ったこともない、ましてや画面越しでの傾聴だったが、なぜか自分を信じて話してくれていると感じた。一人の人間として胸をはだけて話し、謙虚で飾らず、自惚れなどない姿。淡々と語る言葉ひとつひとつに、魂がこもっており、ハートで語り掛けるとはまさしくこのことだと体感した。
私が常務取締役としての抱負を社内従業員に語った時のことを、思い出した。スピーチを終えた後、入社から私に仕事のイロハを教えてくれていた上司に「どうでした?」と感想を聞いたら、叱られた。「頭が勝っている。ハートで話さないと駄目だ。首だけでリードしても、人はついてこない」
いくらテクニックを駆使しても、人に信じてもらえなければ心を動かすことにはならない。その信頼の有無は、自分自身の姿勢で決まる。前向きな気持ちで物事に取り組み、なおかつ絶対無条件に人を信じることから始まるのだ。私自身、これまで何度も人の心が動く瞬間を目の当たりにしてきた。
震災に立ち向かう同級生の後ろ姿や、社会をより良くするために自らが先頭に立つという揺るぎない意志に多くの人が心を揺さぶられ、行動をともにする場面が多く立ち会ってきた。後ろ向きな気持ちを持っている人などいなかった。力強い情熱を感じずにはいられなかったが、同時に思ったのは日本人のDNAともいえる道徳心の存在である。震災の際に奪い合わずに譲り合う姿や、和を乱さずに振る舞う姿が世界から賞賛されたのも、日本人の芯にある高い道徳があるからだと思う。この利害や理屈の外にある道徳心があるのも、人を信じる心からなるものである。
言うは易く行なうは難しだが、人に伝えたいと心底願う固い信念が情熱を呼ぶ。情熱は無条件の信頼を恐れない。人の心に感動を与え行動へと誘うインスピレーションの源は、信念という名の無限の泉にある。
会員拡大は、JC運動そのものである
会員拡大とは、単に組織を維持するために行う活動ではない。ましてや、会員の減少が著しいから拡大をするのでもない。市民意識を変革することで明るい豊かな社会を実現するというJC運動そのものであり、この地域の発展に貢献できる人財を増やしていくための活動でもある。地域や子ども達の未来を真剣に考え、ひたむきな覚悟を持ったメンバーが多くいた方が良いことは明白であり、組織とは数ではないと言われることもあるが、〈市民に必要とされている組織〉であるならばその会員が増えていかないことは矛盾以外の何ものでもない。つまりは、会員拡大とは会員の資質を問われる瞬間でもあるのだ。私自身、元々JCの活動内容や理念をわかったうえで入会したのではなく、入会を勧めていただいた先輩に惹かれてJCに入った記憶がある。
会員拡大を通じて、自分自身の成長に挑戦しながら結果を大事にし、同じ志しを持つメンバーと共にJCらしさを大切にしながら拡大をしていこう。
青年会議所の学びを、ビジネスで生かす
事業や例会をおこなうにあたり、準備や議案書の作成、当日の設営は一人の力では困難であり、メンバーの協力が不可欠だ。利害関係がないJC運動の中で自分の時間を割いて手伝ってくれる沢山のメンバーには感謝を感じる機会が多々ある。
また、会社の経営に関わることや、グループのリーダーを務めるにあたり、組織力の強さは大事な要素の一つである。JCでは一年周期で組織が改編され、その都度効果的な委員会運営が求められる。その運動を通して組織の運営を学ぶ事が出来、それを会社に還元する事ができるのも青年会議所の魅力でもあろう。
JCで起こる様々な問題は企業内でもよく聞く内容のものが多いはずだ。例えば、予算計上の仕組みや、人事に関することなど。そして、このマネジメント方法や解決策は企業でも通用するものということも事実である。JCのためだけの知識にしてはならない。私たちにとって最も身近な社会を守るためJCを活用しよう。
おわりに
私は26歳になる年に青年会議所に入会し、
当時、事務局からの電話には仕事が忙しいと言い訳し出ず、
約2年間例会や事業に出席しなかった。
当時の理事長や先輩にはとても心配をかけたことは今でも反省しているし非常に勿体無いことをしたと自分を責めてしまうこともあった。
だが、今の自分があるのは過去の自分があるからで、
過去を悲観しても良い未来にはつながらない。
むしろ過去の自分から学び、
未来をより良くするために行動することが今日を充実させると思う。
しかし、これが完全な正解だとは思ってない。
どこにも完全な答えがないとしたら、一体どうやって答えを見つければよいのか。
JCも同じだと思う。
こうすれば絶対まちが良くなるとか、これをやると必ず成長につながるとか。
そんな完全な答えは存在しない。
大局的に物事を捉え、多くの知識を学び、様々な意見に耳をかたむけることも大切なことだと理解しているが、最終的に決めるのは自分である。
だからこそ、私たちは思考を止めず、答えのない道を歩き続けるしかない。
ともに同じ場所を目指し、辛くても弱音を吐かず、
誰に何を言われたわけでもなく、勝手に多くのものを背負い込んで。
もうダメだと何度も何度も思いながらも、
その度に目の前を歩くたくさんの背中に勇気づけられる。
そんな姿に奮い立たされて、また前を向いて歩き続ける。
前向きに物事を考え責任を背負い、
ひたむきな覚悟を持って、
私たちは、突き進む
【スローガン】
前向きに、ひたむきに、突き進む
団体概要
一般社団法人水沢青年会議所
〒023-0818
岩手県奥州市水沢東町4 水沢商工会館3階
電話 0197-24-2641
FAX 0197-22-6421